ビジネスモデルきほんのき その1
1. ビジネスモデルとは
1.1. 最初はアイデアから始まる
ほとんどのサービスやプロダクトはふわっとしたアイデアから始まります。もし◯◯◯◯を使って△△△△を作って提供したら喜んでもらえるのではないか? こういったアイデアをシーズと言います。ビジネスに限らずたいていの物事において着想時点は楽しいものです。しかし、それを現実世界に適用させていこうとした途端に痛みが発生します。
ふわっとしたアイデアの段階では、だいたい、なんとなく良いアイデアが浮かんだ気がするもので、「いいもの作れば買ってもらえるだろう」は楽観的に考えていることが往々にあります。では、この「買ってもらえるだろう」は「誰に?」「いくらで?」「なんで?」「買ってもらえる」のでしょうか。そもそも、作ろうとするいいものは「どうやって知られる」のでしょうか。そして、いいものは「誰に」どういった「価値」を提供するのでしょうか? 所有欲でしょうか? 利便性でしょうか? アイデアの段階で買ってくれる誰かの視点で考えられているのでしょうか。
こういった5W2Hのような基本的なことがあまり考えられていないサービスやプロダクトは数多く存在し、いずれ忘却の彼方へ消え去ります。そういったもののために、貴重な資金、時間、人的リソースを費やしたいと思う人はいるのでしょうか?
1.2. 「アイデアを現実世界にインプリする」
アイデアが思い浮かんだら、要素を整理して現実の世界に当てはめてみることを考えましょう。例えば、思い浮かんだアイデアをベースにサービスを作るとします。1つのサービスには多くの要素が必要になります。
実現性について
- そもそも実現できるものなのでしょうか? 技術的に本当に可能なのか? 可能だとして採算にのるラインで実現できるのでしょうか? アイデアが旬なうちに実現できるのでしょうか?
顧客について
- そのサービスを一体、誰が利用するのでしょうか? そして本当に必要になるのでしょうか?
利用してもらうまで
- どうやって知ってもらうのでしょうか?
お金の流れはどうなるのか?
- 顧客はどうやってお金を支払うのでしょうか? そもそも、あなたにお金を払うのは顧客なのでしょうか?
契約形態はどうするのか?
- 契約の形態はそれほど多くのバリエーションがありませんが、それでも代表的なものでもいくつかり、それぞれの業種によって商慣習が異なるので、やはり複雑です。合理的と思っても、商慣習上、受け入れられないことは多々あります。
- 顧客との契約形態についてしっかりとした文書を作ることも必要です。サービスならサービス利用規約(約款)です。こういった文書を作成するには専門的なスキルが必要になります。専門家に依頼する際に、明文化するべき条件などをしっかり定めておく必要があります。
コスト・収益のバランスは取れるのか? 黒字化はいつか?
- 思い浮かんだアイデアが素晴らしいものだったとして、それを実現するためのトータルコストはどれくらいになるのでしょうか。掛かったコスト回収も考えながら価格を設定した場合、顧客にとって魅力的な価格になるのでしょうか?
法律やコンプライアンスは問題ないか?
- あらためて言う話でもありませんが、法律は守らなくてはなりません。法律で許されない事は自分たちの人生そのものを危うくするリスクになります(そのリスクをとるから、違法ビジネスは莫大な収益を上げられるのかもしれません)。また、既に起業している組織であれば、組織内の規則やポリシーがあり、例えば顧客から預かる個人情報はどのように管理しなくてはならないか、決まり事があるはずです。また、知的財産や著作権の確認も必要です。
どういった価値があるのか?
- そもそもの話です。顧客は、あなたのサービスを利用することでどういった価値を享受できるのでしょうか? 所有欲が満たされるのでしょうか? 何か、いままでできなかったことができるようになるのでしょうか? もしくは顧客が面倒だと思うことを代行するのでしょうか?
運用や保守はどうするのか?
- 何らかのトラブルがあれば、顧客は問合せをしてくるでしょう。これは誰が対応するのでしょうか。
- ITを使ったサービスであれば、利用しているOSやミドルウェアのアップデートは必須です(さもなければセキュリティ等で重大なリスクを抱えることになります)。アップデートは誰が対応するのでしょうか? 少なくともベンダーはあなたの都合にあわせてアップデートのお知らせをしたりはしません。
極論を言えば、これらの事項のそれぞれに5W2Hが存在すると考えてください。コスト節約のためにも自分達でできることは何でも自分達でやりたいと思うのは問題ありませんが、だからといって考慮すべき事が減るわけではありません。アイデア実現のためには多くの要素を一つ一つ組み立てて、現実の世界や組織で上手く扱えるようにしなくてはなりません。個人的にはこれを「アイデアを現実世界にインプリする」という感覚で捉えています。作るものはアプリやシステムだけではないのです。関わる人たちの動きも設計しなくてはならないし、市場にどのように入っていって、どういった感じで共生していくのかも考える必要があるのです(そもそも入っていける市場は存在するのでしょうか?)。 こういったことを、実際に現実で試す前にしっかり検証するためにあるのがビジネスモデルです。現実世界にインプリするための設計書のようなものだと考えてください。
(続きます)